肝 MR エラストグラフィ撮像・管理指針(2022 年 3 月 23 日 日本医学放射線学会理事会承認)

試:20-50、19-28、17-22、17-26、15-31

参考:PDF

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背景

慢性肝疾患における肝線維化の診断について最も信頼できる検査は肝⽣検とされており、数多くの肝⽣検が施⾏されている。しかし、肝⽣検で得られた検体は肝組織の⼀部分のみであることや、侵襲的であること、⼊院が必要で費⽤が⾼いこと、肝⽣検の繰り返しは困難であること等が課題である。肝⽣検以外の肝線維化を評価する⾮侵襲的な検査としては、⾎液⽣化学的検査、超⾳波エラストグラフィもあるが、これらよりもMRエラストグラフィは早期に、かつ正確に肝線維化を診断することができるとの報告がある。さらにNAFLD/NASH診療ガイドライン2020改訂第2版においてもMRエラストグラフィは肝線維化進⾏度評価において超⾳波エラストグラフィと並んで有⽤であると推奨されている。

MRエラストグラフィは、⼀般的なMRI装置を⽤いるものの、その検査中には専⽤の加振装置を併⽤することから、特殊な撮像法が必要となるほか、その安全管理や精度管理に関しても専⾨的な知識や習熟した⼿法が求められる。このため、肝MRエラストグラフィの検査⽅法やその精度管理及び安全運⽤管理について、指針をとりまとめた。

MRエラストグラフィの定義

体外振動により肝内に弾性波を伝搬させる加振装置と、弾性波の振動位相をプロトンの回転位相に変換させる位相コントラスト法を⽤いて、MRIで弾性波の速度を測定し、肝の硬度を計測する⽅法

検査⽅法

以下の⽅法を必須とする。

1.5Tもしくは3Tの装置で撮像する。

②薬事承認を得た専⽤の体外振動デバイスを使⽤する。

③位相画像、波画像、硬度マップ(弾性率マップ)を得られる適切なシーケンスで撮像する。

検査と画像評価の精度管理

MRエラストグラフィの精度管理については以下の通り規定する。

①臨床で使⽤するにあたり、事前に名以上でボランティア撮像を⾏い、加振装置のパッシブドライバの被験者体表への設置部位・⽅法や息⽌め⽅法、撮像を⾏うMRI操作者の違いなどによる測定値のばらつきを最⼩限とし、繰り返し精度を可能な限り向上させ、それを維持するための管理体制を整える。

②肝MRエラストグラフィ画質管理者を⽇本磁気共鳴専⾨技術者認定機構が認定する磁気共鳴専⾨技術者、⽇本医学放射線学会が認定する放射線診断専⾨医、および⽇本肝臓学会が認定する肝臓専⾨医の中から名を定め、肝 MRエラストグラフィ画質管理者のもと、精度管理体制を整える。

③臨床における肝硬度評価については、放射線診断専⾨医および肝臓専⾨医が協⼒して評価する体制を整えることが望ましい。

④肝硬度評価に際して、gradient echo(GRE)もしくはspin-echo echo-planarimaging(SE-EPI)などの強度画像、位相画像、波画像(シネモード)、硬度マップの他、信頼度マップなどを参照し、信頼できる部位から肝の硬度を計測する。

⑤肝MRエラストグラフィ画質管理者は画質の管理とともに、他の施設との互換性を担保し、標準的な保険医療を⽬指すことが望まれる。具体的には、細則に定める、撮像条件や各種画像(GREもしくはSE-EPIなどの強度画像、位相画像、波画像、硬度マップ)、検査件数などの情報の収集に協⼒し、標準的かつ適正な肝MRエラストグラフィの保険医療の運⽤に尽⼒することが望ましい。

装置の安全運⽤管理

MRエラストグラフィの装置の安全運⽤管理について以下のとおり定める。

①⽇本磁気共鳴医学会と⽇本医学放射線学会が定める臨床MRI安全運⽤のための指針に基づき、MRI装置の安全管理を⾏なっている。

②専⽤の加振装置(アクティブドライバ、パッシブドライバを含む)の定期的な点検に加え、当該装置が正常に動作しているかどうかの確認と破損等がないことを肝MRエラストグラフィ画質管理者の監督のもと磁気共鳴専⾨技術者あるいはそれに準ずる者が年に1回以上確認を⾏うことが望ましい。

詳細については、別途細則を定める。

 

 

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