1.GRE法の特徴
試19-11、16-15、12-10、11-5、10-23、9-9、9-26、8-26、8-3、6-9、5-14
参考:完全解説P257.P323~326~、撮像技術P91、259、264、260
参考PDF
・180°パルスを使用しない
→TRの短縮により短時間撮像が可能
→SNR低下のためフリップ角を小さくして補償する
→磁化率の影響を鋭敏に受ける
→T2緩和と磁場の不均一の影響を合わせたT2*減衰となる
・コントラストはFAにより変化する
T1WIを撮像する際は,FA(flip angle)を90°よりも小さくする
T2*WIを撮像する際は30°以下の小さいFAを用いる
・造影検査では、TEはin phaseもしくは脂肪抑制を併用する
・信号強度はピクセルサイズの影響を受ける
・静磁場強度が高くなる程、opposed phaseとin-phaseの間隔は小さくなる
・3個のαパルスを異なった間隔で印加すると3個のFIDと5個のエコーが形成される
・TRを短縮するとSSFPになる
・Ernst angle:信号強度が最大となるフリップ角
Cosα = exp(-TR/T1)
2.臨床で用いられるGRE法
実際に用いられるGRE法は大きく分けて2種類である
2-1.spoiled GRE法(SPGR法、FLASH法)
・TRを200ms以下に短縮した部分フリップ角GREシーケンス
・steady stateによる残留横磁化を強制的に消去することで横磁化の影響を無視できる
〇スポイリング
・定常状態の残留横磁化を強制的に消去すること
→残留横磁化がコントラストに与える影響を最小にするため
→目的以外のエコー信号を出さないようにする
・スポイリングの影響でSNRはGRASS法、FISP法より劣る
・スポイリングの種類
a)グラディエントスポイリング(傾斜地場スポイリング)
FLASHで用いられる
スライス方向にスポイラー傾斜磁場をかけてアーチファクトをなくす
b)デジタル制御によるRFスポイリング(Phase Cycle法)
SPGRで用いる
位相エンコード方向にrewinder傾斜磁場をかける
励起RFの位相をTR毎に変えることで残留横磁化を消去する
・グラディエントスポイリングとRFスポイリングは併用でき、横磁化消去がより確実になる
・体動に弱い
グラディエントスポイリング VS RFスポイリング
グラディエントスポイリング | RFスポイリング | |
スポイラー | 磁場勾配 | RF |
TR・撮像時間 | 長 | 短 |
渦電流の影響 | あり | なし |
スライス面の制限 | あり | なし |
細かいRF位相調整 | 不要 | 必要 |
検波 | 容易 | 複雑 |
確実性 | 低 | 高 |
〇信号強度
・GRE法ではTRの長さで信号の性質が異なる
TRが短い場合、SSFPが生じる
TRが長い場合、SSFPは生じない
・TR、TE、フリップ角αの組み合わせによりコントラストが変化する
α小、TR長、TE長→T2*WI
α小、TR短、TE短→PDWI
α大、TR短、TE短→T1WI
α大、TR長、TE短→PDWI
K:比例定数
f(v):流速分布関数
α:フリップ角
〇用途
・腹部の撮像
→造影剤を使用したマルチスライスのダイナミックMRI
→腹部領域のT1WIではspin echo法に代わって用いられることも多い
・TEを長くしたT2*WIとしても用いられる
・流れに対して非常に感度が良く、MRAにも使用される
2-2.残留横磁化を積極的に利用するunspoiled GRE法(coherent GRE法、広義のSSFP法)
3つの手法に分類される
①FID信号のみを取り出すGRASS法、FISP法
②spin echo信号(Hahn echo + stimulated echo)のみ取り出すSSFP法、PSIF法
③FID信号とspin echo信号両方を利用するbalanced SSFP(true FISP法、balanced FFE法、FIESTA法)、DESS法、CISS法
GRASS法、FISP法
・steady stateによる残留横磁化を積極的に利用し、FID信号のみを収集する方法
・位相エンコード方向の傾斜磁場によりばらけてしまった横磁化に対して、位相エンコードの傾斜磁場の極性を反転(rewind)させて、再度横磁化の位相をそろえて横磁化成分を維持する
・リワインダーグラディエントが機能しないとFLASH Bandが顕著に現れる
・flowがある部分ではsteady stateの状態は壊れ、信号が低下する
→流れの補正が必要
・残留横磁化を用いるため、TRの長さにかかわらず強い信号が得られる
〇用途
T2*WI:液体は高信号を呈し、脊髄液や関節液が高信号となる
MRA:流れに対して敏感であるため
〇各手法の比較
手法 | 特徴 | SNR |
spoiled (SPGR、FLASH) | スポイラーでSSFP消去 | 中間 |
unspoiled(GRASS、FISP) | リワインダーでsteady state維持 | 高 |
SSFP、PSIF |
リワインダーでsteady state維持 |
低 |
balanced SSFP |
リワインダーでsteady state維持 |
高 |
SSFP法、PSIF法
・強いT2WIで、MRCPなどのhydrographyに利用される
・steady state free precessionで生じたspin echo信号を収集しT2WIを得る
他のGRE法と異なり、傾斜磁場ではなく複数のRFパルスによって信号を得るため、T2コントラストが得られ、T2*の情報は少ない。
・信号が弱い
・髄液等のflowのアーチファクトが強い
・傾斜磁場を用いて、エコーをRFパルスとRFパルスの間に発生させ、
実効TEは2TR-TEとなる。
→実際には、spin echo信号はRFパルスに一致して発生する
balanced SSFP(true FISP法、balanced FFE法、FIESTA法)
参考:これで完璧MRI P97
完全解説P244、P253、P265
応用自在P99
試:17-18、16-15、16-36、13-43、13-23、12-25、10-47、9-26、8-26、8-27、5-27
・コヒーレント(アンスポイルド、広義のSSFP)型のシーケンス
・3軸ともバランスをとることでFID信号とspin echo信号が同じタイミングで発生することを利用している
・リワインダー傾斜磁場が必要
・残留横磁化を利用する
・スポイリングは使用しない
・SNRが高い
・水、血管、脂肪が高信号
・動きに強い
・コントラストの影響因子
「T1値」「T2値」、「FA」「ダミーパルスの印加方法,印加数」
画像コントラストはT2/T1に比例
・信号強度はT2/T1にほぼ比例→hydrographyに適する
K:比例定数
f(v):流速分布関数
α:フリップ角
・Gd造影剤により造影効果を示す
・血管の信号
3方向(XYZ)の流速補償が成り立つ→流入効果とともに血管内が高信号になる
各k-space orderのshot間隔が長いほど軟部組織と血液の信号が上昇する
フリップ角を深くする→血管が高信号になる
・linerオーダーに対しcentricオーダーの画像は、定常状態移行期の画像コントラストになりやすい
・Centric orderは傾斜磁場のスイッチングがLinearに比べて激しい
→渦電流による鎬模様アーチファクトが発生しやすい
・各エコーの位相を合わせるため、TR<<T2でTE=TR/2に設定する
・TRとTEが長いと,resonance offset angleによるbanding artifactが出やすくなる
・磁場の不均一の影響を受けるとFLASH bandアーチファクトを生じる
・対策として次の項目があげられる
「RFの位相が正確」、「磁場勾配が正確に相殺されている」、
「静磁場の均一性」、「シミングの正確性」、「TRを短くする」
・hydrographyに適する(MRCP(胆管膵管撮影)、MRU(尿路撮影)、MRM(脊髄腔撮影)など)
・シネ画像に有効
・冠動脈や門脈、下大静脈などの血管系の描出に優れる
DESS(dual echo steady state)法
参考:完全解説P264
これで完璧MRI P96
・同一のTR内にFISPのFID信号とPSIFのspin echo信号の両方のエコー信号を別々に収集する
それぞれフーリエ変換し、最後に画像再構成の段階で位相を合わせた上で合成する
FISP:解剖学的な形態の情報を得る
PSIF:病期の情報を得る(強いT2強調の付加)
・動きに弱い
・関節液と軟骨の描出に優れる
CISS(constractive interface in the steady state)法
参考:完全解説 P264
これで完璧MRI P96
・高分解能の強いT2強調三次元画像を得る方法
・FIDとspin echoの信号のずれから生じるFLASH bandを打ち消すために、RFの位相Φを固定したシーケンス(SSFP++)と、Φと-Φを交互に照射するシーケンス(SSFP+-)で撮像し、 両者の和を信号強度とする
・同一のTR内でFISPとPSIFの信号を収集する
・動きに弱い
・頭部小脳橋角部、内耳、関節の描出に優れる
補足:SSFP(steady state free precession:定常状態自由歳差運動)
参考:これで完璧!MRI P87
・TRを短縮することで縦磁化と横磁化の両方が同時に残存して安定しSSFPと呼ばれる。
・SSFPではFID信号とspin echo信号(Hahn echo、stimulated echo)が連続的に発生する
GRE法ではRFパルスを組織のT2時間よりも短い時間で繰り返すと、縦磁化はだんだん減少し、5~6回目で一定の縦磁化となる。また、TRがT2よりも短いため横磁化も残り続ける。(前の励起によって生じる横磁化のことを残留横磁化という)このような状態では縦磁化と横磁化の両方が同時に存在して安定した状態が持続する。
この状態がSSFPである。
SSFPでは残留横磁化と縦磁化の両方が信号発生に寄与するため大きな信号が得られる。この状態を維持するにはTR=20~50msec、フリップ角=30~45°に設定する。残留横磁化が大きいもの(液体のように組織中の長いT2時間を示す物質)ほど強い信号を発生させる。
このようなSSFPの状態では短い間隔でRFパルスを印加すると次のRFパルスまで横磁化が残存しているため、FID信号以外にspin echoの信号も生じる。これは複数のRFパルスによって、Hahn echo(フリップ角が90°と180°の組み合わせ以外の時に生成されるエコー)ならびにstimulated echo(3つ以上のRFパルスで生じるエコー)と呼ばれる。
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