脂肪抑制

試17-9、17-10、17-17,16-8、15-12、14-19、13-22、9-5、9-16、7-2、6-2、6-10、5-13、2-5、1-5
参考書籍:集中講習P103
参考PDF①  参考PDF②
参考PDF③  参考PDF④
参考PDF⑤

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①選択的脂肪抑制法

水と脂肪の周波数差を利用した方法
(Fat SAT、Chem SAT、CHESS、SPECIAL、SPIR(SPAIR))

○原理
・同じプロトンでも脂肪と水では共鳴周波数が異なる(化学シフト)
・脂肪は水よりも3.5ppm(1.5Tの静磁場では3.5ppm224Hz)低い周波数で共鳴する
・脂肪の共鳴周波数のみに狭いバンド幅のRFパルスを照射した後、スポイラー傾斜磁場で位相分散させてからデータ収集を行う
・脂肪抑制パルス(pre-saturation pulse)をかけることで、脂肪プロトンの信号を落とし、水プロトンのみの画像を取得する
メチル基メチン基メチレン基の信号が抑制される
・不飽和脂肪酸の共鳴周波数は水に近いため抑制されない
・静磁場強度がい方が有利→水と脂肪の周波数差が大きいため
・脂肪抑制効果は静磁場の均一性に依存する

○長所
・どんな撮像シーケンスにも使用可能
・磁場が均一であれば脂肪のみの抑制が可能 → 脂肪と同程度のT1の組織であっても抑制がかからない

○短所
・磁場の不均一な条件下では抑制効果が不十分になりやすい
例:「FOVが広い場合
マグネットの中心から離れる場合
空気に接する部位
メタルなどの磁化率の異なるものが存在する場合
磁性体がある部位
撮像範囲の辺縁

・TRが延長する

②T1緩和時間差法(STIR画像)

非選択的脂肪抑制法

○原理
・反転パルスとして180°パルスを最初に入れる
・T1緩和によって脂肪の縦磁化がなくなる時間(null point)をTIとする
→ TI=ln2×T1
=脂肪のT1値の69.3%
最適な TI 値はTR、静磁場強度にともなって延長する
(正比例ではない)

・その後通常の撮像シーケンスが続き、脂肪組織は励起パルスによって横磁化成分が発生しないため、脂肪抑制画像となる

○長所
・磁場の不均一の影響を受けにくい→安定した脂肪抑制効果を得られる

○短所
・TRがくなる
→ T2WIにのみ適用できる

・SNRが

・脂肪に対する特異性が
→脂肪と同じ緩和特性(null point が同じ=T1が同じ)を示す組織(血腫や高タンパク、造影後の組織など)も信号抑制される
→「この画像で信号が抑制されたから、間違いなく脂肪である」とは言えない

・造影剤投与後の脂肪抑制画像として使用してはいけない

○CHESS法との比較
CHESS法よりも
信号雑音比が低下する
撮像時間が延長しやすい
加熱効果の影響を受けにくい
磁場の不均一性に左右されにくい

③水/脂肪信号相殺法

試16-8、13-23
参考:完全解説P333
(WFS、Dixon、Chopper、GRE法式Dixon、IDEAL/FLEX)

○概要
水と脂肪の位相分散の差を利用した方法
・水画像と脂肪画像を作成することができる
・GRE法でTE(エコー時間)を変化させて脂肪を抑制する
・in phase画像とopposed phase画像
2つの画像を比較し、out of phase画像で信号が低下すれば脂肪が存在する
2つの画像を差分処理すると脂肪画像、加算処理すると画像を算出できる
磁場の不均一性の影響を補正できる
脂肪鉄沈着の検出に利用できる

○用途・特徴
・画素内に水と脂肪が混在するような腫瘤、および解剖学的構造部位における微量な脂肪の検出に優れる
→in phase画像とout of phase画像を比較して、out of phase画像で信号が低下すれば脂肪が存在する

・opposed phase 画像では臓器と内臓脂肪の境界の画素は水と脂肪が混在するため、臓器が黒く縁取られるように描出される
→第2の化学シフトアーチファクトという

・短いエコー時間で信号を得ると①血管を映し出せる ②水と脂肪を区分けできる

○DIXON法の原理
・水と脂肪の位相差を利用した計算画像
・水と脂肪の位相差は225Hz(1.5Tの場合)
→ 1/2254.5msで同位相
  2.25msで180˚ずれた逆位相となる
  2.25ms毎に逆位相、同位相を繰り返しながら減衰する

・同位相(in phase:IP)の画像
:水と脂肪の位相が揃った状態

・逆位相(opposed phase(out of phase) :OP)の画像
:水と脂肪の位相が正反対になった状態

この2種類の画像間で演算することにより水画像や脂肪画像を得る方法で、
以下の関係が成り立つ

(1)IPの信号強度 = Water + Fat
(2)OPの信号強度 = Water – Fat
(1)(2)式より Water = (IP + OP)/2
Fat = (IP – OP)/2

※対象3pointDIXON法では、ボクセル内の脂肪と水の比率が同量になると両者の判別は不可
 →そのため、非対称3pointDIXON法が考案された

④選択的水励起法(binominal pulse法)

試14-7
参考書籍:完全解説P316、P294、集中講習P111~

○概要
・水の周波数だけに90°パルスを与えて励起する
・与える強度を複数等分にして、水の周波周期のときだけ90度パルスが、倒れる方向にかかるようにする
・DEパルスとして二項励起パルスを利用する
・1-1タイプより1-2-1タイプのほうが最短TEは延長する

○1-2-1の二項展開パルスによる水励起のパルス間隔d

 d=1/(2・C・f)

C:ケミカルシフト[ppm]
f:1Hの共鳴周波数[MHz]
C・f:水と脂肪のケミカルシフトの差(Hz単位)

⑤化学シフトおよびT1の差を利用した脂肪抑制法

(SPAIR法:spectral attenuated with inversion recovery)
B1不均一に強い
磁場装置で有用
・脂肪選択反転パルスに断熱パルスを使用する→より均一に脂肪の縦磁化を倒すことができる
・null Pointの最適化が必要
・RFパルスは比較的長い印加時間と反転時間が必要であるため、TRが延長する
・adiabatic pulseは高磁場体幹部に有用である

各脂肪抑制法の比較

  STIR  脂肪飽和  水励起 SPIR   CSS-IR  水脂肪分離
代表例 STIR 

Chem SAT
Fat SAT 

Pro Set

PASTA
SPIR

SPECIAL
SPAIR

ASPIR
Dixon

IDEAL
原理  T1  周波数  位相  周波数+T1 周波数+T1  位相
予備RFパルス 非選択性

180° 
選択制

90° 
非選択性二項 

90°
選択制

100~110° 
選択制

180°断熱
  –
B0不均一の影響 ++  +++  ++   ++   -
RF不均一の影響  ++  +++ + ++  +  -
T1の影響  ++  +   +  ++ 
脂肪特異性   +  +  +  +  +
撮像時間延長 ++   +  ++  +++

 

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