頭部 (臨床)

試19-32、19-33、17-9、16-26、16-27、15-2、15-37、15-39、14-40、13-16、13-17、12-48、12-49、12-50、11-6、11-9、10-2、10-15、9-33、8-11、8-16、8-17、7-11、7-36、6-3、6-5、5-15
参考PDF①  参考PDF②(P64-65)

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脳梗塞

参考書籍:臨床画像P34~

DWI

・虚血による細胞外液浮腫を捉えるために撮影する
・出血性脳梗塞では信号となることがある
・超急性期ではDWIでのみ異常高信号が描出されることが多い

FLAIR

・FLAIRで異常が明らかになるのには,遅い症例では発症後24時間程度経過した急性期以降になる
・FLAIRでの高信号は血栓を反映した所見と考えられる
(intra-arterial signもしくはhyperintense MCA sign)

・造影剤を用いた灌流画像を撮影して,DWIの病変範囲を比較することがある

脳梗塞発症後のMRI・CT所見の経時的変化

病期 病態 MRI CT
DWI ADC T2WI
発症直後(0~1時間) (閉塞直後:灌流異常) 所見無し 所見無し 所見無し 所見無し
超急性期(1~24時間) 細胞性浮腫 高信号 低下 所見無し early CT sign
急性期(1~7日) 細胞性浮腫+血管性浮腫 高信号 低下 高信号 低吸収
亜急性期(1~3週間) マクロファージ、血管新生 高→PN→低信号 低→PN→上昇 高信号 低→FE
浮腫軽減 高信号 低吸収
慢性期(1ヶ月~) 壊死、吸収→瘢痕化 低信号 上昇 高信号 髄液濃度

early CT sign:基底核輪郭の不明瞭化、皮髄コントラスト低下

PN:pseudonormalization
 ADCが低下から上昇、DWIが高信号から低信号に移行している過程で正常(等信号)レベルを回復する

FE:fogging effect
発症2週間前後で血管性浮腫の後退に伴い、CTにおける低吸収域の濃度上昇による等吸収域化、不明瞭化が生じる

梗塞部位と症状

試15-37
参考HP①  参考HP②  参考HP③
参考HP④  参考PDF①
表 梗塞部位と代表的な症状

梗塞部位 出現する機能障害
前頭葉 反対側の運動麻痺、優位半球の障害で運動性失語症、性格・人格変化、知的機能の障害(思考・記憶力低下など)
頭頂葉 知覚障害、失行、失認、ゲストマン症候群
側頭葉 優位半球の障害で感覚性失語症、聴覚障害、記憶障害
後頭葉 視覚障害、視覚失認
視床 知覚過敏、両側視床の障害で情緒不安定、縮瞳、内下方への共同偏視
視床下部 ホルモンの分泌異常、体温調節異常
大脳基底核 不随意運動、筋緊張の変化、顔の表情の消失、少量の出血でも内包が傷害されると反対側の片麻痺を起こす
大脳辺縁系 てんかん発作、コルサコフ症候群
小脳 平衡障害、起立障害、失調、構音障害、意識障害
手足や顔の麻痺、失調、平衡障害、難聴、意識障害、構音障害
中脳 手足や顔の麻痺、意識障害、構音障害
延髄 手足や顔の麻痺、意識障害、呼吸停止、嚥下障害、失調、複視、構音障害

治療法

参考HP①
・血管の詰まりを解消し、再発を防ぐ治療
 血栓回収
 血栓溶解療法(rt-PAなど)
 抗凝固療法(アルガトロバン、ヘパリンなど)
 抗血小板療法(アスピリン、クロピドグレル、オザグレルなど)

・脳保護療法(エダラボンなど)

・悪化を防ぐ治療
 脳浮腫の改善(マンニトール、グリセロールなど)
 手術(開頭外減圧療法)

くも膜嚢胞

参考HP①
参考HP②
・DWI:低信号
・T1WI:低信号
・T2WI:高信号

脳膿瘍

参考HP①

・DWI:著明な高信号
・ADC:低信号

・膿瘍の被膜
T1WI:高信号
T2WI:低信号

髄膜炎

参考HP①

・FLAIR
くも膜下腔の高信号

・DWI
脳表に沿う高信号

・Gdによる造影効果
局所性またはびまん性の髄膜異常増強効果が見られる
→DA型:硬膜、硬膜下腔、くも膜に沿った増強効果
PS型:くも膜下腔、軟膜に沿った増強効果

・造影後FLAIR
:「脳表髄膜の増強効果」「脳表静脈は増強効果なし

・造影後T1WI
:「脳表髄膜の増強効果

髄膜腫

参考HP①
参考HP②

・T1WI、T2WIで灰白質とほぼ等信号を示すことが多い

・ダイナミックMRI
急速に強い増強効果が均一に見られ、徐々に低下する
増強効果を有する硬膜の肥厚像がみられる
(dural tail sign)

転移性脳腫瘍

参考HP
参考文献①

・小さな転移性脳腫瘍の検出の際、倍量投与が有用
※ガドテリドール(プロハンス)のみが転移性脳腫瘍の診断にのみ倍量投与の厚生省認可を受けている
 通常、成人には本剤0.2mL/kgを静脈内注射する
 初回投与後、腫瘍が検出されないか、または検出されても造影効果が不十分であった場合には、初回投与後30分以内に0.2mL/kgを追加投与することができる

聴神経腫瘍

参考HP①

・T1WI:低〜等信号
・T2WI:高信号
・造影:不均一な増強効果

神経鞘腫(schwannoma)

参考HP①

・造影効果が高い

びまん性星細胞腫

参考HP①
・造影増強効果は乏しい → 血液脳関門が保たれているため

神経膠芽腫

参考HP①

・T1WI:低信号
(亜急性期の出血は高信号)

・T2WI:不均一な高信号
(壊死は高信号、充実部は低信号)
腫瘍血管のflow voidが見えることがある

・DWI:細胞密度が高い部位は異常高信号

・造影:リング状に増強効果あり

クロイツフェルトヤコブ病

参考HP①

・発生部位
:「基底核(被殻、尾状核)
視床
大脳皮質

・画像所見
DWI、FLAIR信号
ADCは時期によって異なる

多発性硬化症(MS:multiple sclerosis)

参考HP①  参考HP②
・最も頻度の高い中枢神経系の炎症性脱髄性疾患

・T2WI:信号
・DWI:信号
・T1WI:等〜低信号

3.所見:Ovoid lesion
      Open-ring sign

 

グロムス腫瘍

参考:https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/16715

・極めて血管に富む

・ダイナミック撮像
 豊富な血流が確認出来る
 造影早期相できわめて強い造影効果を示す

・腫瘍血管の評価にはMRAが有用

キアリ奇形

試:16-32、17-34
参考HP①  参考HP②  参考HP③

・所見:
小脳扁桃が大後頭孔を超えて脊柱管内への下垂
5mm以上が異常

T1もしくはT2WI矢状断が有効
小脳扁桃は下垂し、丸みが失われくちばし状の尖った形を呈する

 
図 キアリ奇形(T2WI Ax)


図 キアリ奇形(T2WI Sag)

より引用

 頭部領域における拡散制限を示す病態

・細胞性浮腫を示す疾患

:「脳梗塞の急性期・亜急性気」
「静脈性梗塞の一部」「脳炎」
「Creutzfeldt-Jakob病の一部」
「中毒(COなど)」
「代謝など細胞性浮腫全般」
「Wernicke脳症」「Wilson病」「軸索損傷」
「ミトコンドリア脳筋症」
「浸透圧性髄鞘崩壊症」「フェニルケトン尿症」
「薬剤性」「Waller変性」
「低酸素性虚血性脳症」「てんかん焦点(発作後)」

・高い粘稠度 を示す疾患

:「脳出血」「出血性梗塞
脳膿瘍」「類上皮腫」「脈絡叢嚢胞

・高い細胞密度

:「悪性リンパ腫の多く」「小細胞癌転移
髄膜腫」「髄芽腫」「胚種
多発性硬化症の一部

脳出血の性状と脳実質のコントラスト

参考書籍:完全解説P96~
参考HP①  参考PDF①
参考文献①

時期  血腫の状態 T1WI T2WI
超急性期

(1~24時間)(~1日)
オキシヘモグロビン

Fe2+/反磁性
軽度低信号  軽度高信号
急性期

(1~7日)(1日~1週)
デオキシヘモグロビン

Fe2+/常磁性 
軽度低信号 低信号
亜急性期

(1~4週) (1週~1ヶ月)
メトヘモグロビン

Fe3+/常磁性
高信号 低信号

高信号
慢性期

(1ヶ月~)
ヘモジデリン

Fe3+/常磁性 
低信号 低信号

下垂体

参考書籍:撮像技術P151
参考HP①

・正常下垂体の後葉はT1WIで信号を示す
脳血流関門がなく、ダイナミック造影では早期から徐々に造影される
・T1WISagの撮像では、周波数エンコード方向をAP方向にして、化学シフトによる下垂体後葉と斜台の脂肪の重なりを避ける工夫が必要
・中枢性尿崩症:T1WIの下垂体後葉の信号が消失する
・ラトケ嚢胞:T1WIで信号、T2WIで信号、造影効果なし
・下垂体腺腫:正常組織よりも遅れて造影効果を示す

・類皮嚢胞腫(dermoid cyst)
参考HP①
DWIで著明な信号を示す
造影検査は微妙

・類表皮のう胞 epidermoid cyst
参考HP①
造影効果なし
DWIにおいてT2 shine throughの影響で信号を示す

VBM (Voxel-Based Morphometry)

試18-27

参考PDF①

・脳の形態的変化を解析する手法の一つ

・MRI画像から脳の灰白質、白質、脳脊髄液の体積を測定し、統計解析する

・統計解析により、群間の脳構造の違いを調べることができる

・脳の神経変性疾患や脳卒中、アルツハイマー病などの脳疾患の診断や治療に応用される

・信号強度に影響を受けるため、画像の前処理が重要

・より高いSN比を確保し、より高い空間分解能を得るため、高い静磁場強度が望ましい

その他

・血液脳関門(BBB:blood-brain barrier)
 正常脳実質に存在する
 造影剤はBBBを通過できない
 正常の脳組織は髄膜脈絡叢脳室周囲器官以外は造影剤による増強効果は受けない

・小脳橋角部はThin sliceなどの高分解能画像が有用

・造影検査において、骨転移を判読するために少なくとも横断像には脂肪抑制を付加する必要がある

・クモ膜下出血の診断にはFLAIR像が有用

・もやもや病は頭蓋内の内頚動脈に閉塞や狭窄がみられる

・椎骨動脈解離:MRAにて広狭不整(Pearl and string sign)を示す

・高濃度酸素を投与しているとFLAIRで脳溝が信号になることがある

コメント

  1. さしすせほ より:

    非常に分かりやすく簡潔にまとめていただきありがとうございます。いつも大変参考にさせて頂いております。

    一点、髄膜炎の項目で気になったのですが造影パターンはDAとPSになるかと思います。
    これは硬膜:dura mater, クモ膜:arachnoid mater, 軟膜:pia mater, クモ膜下腔:subarachnoid spaceの頭文字から来ているものです。

    • 対策ノートの人 より:

      さしすせほ様

      コメントありがとうございます。
      さしすせほ様のご指摘の通り、DAとPSですね。
      過去問10回問題2の選択肢文にだまされてました(DS、DA)。
      ノートの方も修正させていただきました。

  2. あたやま より:

    お世話になっております、17回の問題について教えていただきたいです。
    36の血種のコントラストの問題です。
    不適な気がしているのですが、5の一週間というところが怪しいのと3の赤血球内だと低信号(辺縁は高信号)のどちらかが正解だと思っています、たぶん3なきはしています、5の1っ週間で慢性期はさすがにおかしいので。。。
    ご意見いただければ幸いです。

    • 対策ノートの人 より:

      あたやま様

      コメントありがとうございます。
      第17回 問36について回答について返信です。

      結論から言うとこの問題は不適だと考えます。(認定機構からの不適報告はないので真の正答はわかりません)

      私もあたやま様の考えと同じで、選択肢3と5で悩みました。
      ・選択肢3について
      ヘム鉄の変化とT1強調像の組み合わせが一致しないのではないかと考えました。
      完全解説P96~には、メトヘモグロビンはT1短縮効果が強い(T1WIで高信号)といった内容の記載があるため、この選択肢は誤りとしました。

      ・選択肢5について
      期間の区分が1週間なのがひっかかりますね。
      慢性期(1ヶ月~)がヘモジデリンの状態だと思うのですが、1週間からだとまだ亜急性期なのではないかなと思いました。亜急性期であればメトヘモグロビンの状態だと思うので、この選択肢も矛盾が起こっている気がします。

      ・局在について
      下記のPDFを参考にしました。
      https://jsrt-tohoku.jp/cms/wp-content/uploads/2017/06/a3c8b958fed2062b30f4a57520b5e10a.pdf

      回答ができないという結果になりました。
      あたやま様の参考になれば幸いです。
      以上、よろしくお願いいたします。

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